3連休はお山界わいは雪だったようなので、夏タイヤしかない我が家としては、断然下界にとどまってぬくぬくしているしかないのでした。成人式の賑わい、朝青龍の初日、二日目の勝負結果などがニュース。そして、麻生内閣の低迷も・・・。

 そんな中、私はそもそも「本が好き!」の献本でご縁を結んだジャック・フロスト警部の世界に迷い込んでいて、二日間、顔も上げられず、運動不足でてくてくエンジェルがかわゆくない魔物と化けても構わなかったのです。




 最初に読んだのは献本でいただいた「フロスト気質」上下2冊だった訳ですが、刑事コロンボどころじゃない曲者っぷりに参りましたね〜。同僚やいやみったらしい上司に、町の人々。PTAが眉を顰めそうなジョークもたっぷり。年の頃は私とそんなに違わないと思うんだけど、絶対に私の方がパリッとして見えるわよ!と日本の中年オバサンがほのかな優越感を抱けるのも良いというものです。

 額後退、ほほに名誉の傷あり、やもめになりたてのフロストは、事務的処理はまるでダメ、秩序だった捜査はせず、手当たり次第順不同、おまけに上司の指示は守らない・・・・違法捜査やスレスレ捜査をしつつ・・・下品でむさいことこの下なし。

 本当にどうしようもない警部なのに、同僚の多くや、町の怪しげな人物には好かれないまでも、まともな対応をしてもらえる不思議な存在。

 それはフロストの清濁併せ呑む気質、お偉方達がものごとの本質を誤っている時に、押さえるべきところを押さえ、階級社会であるイギリスのワーキングクラスや、人生の吹き溜まりにいるような人たちに対しても、公平な態度を貫いているからかと思うのです。


 この「クリスマスのフロスト」では少女が行方不明になった事件が発端で、次から次へと色々出てくる訳で、警察長の甥っこの取り澄ました坊やがだらしないフロストの部下として現場に同行。こんな汚いロートルよりは、警部の鏡みたいなアレンの部下になりたいなぁ〜と思いながら、激務に明け暮れるのであります。この坊やは最後までフロストの独特の素晴らしさには気が付かなかったようで。



 「フロスト日和」ではフロストの犠牲になったのは、署内で暴力事件を起こしてしまったために警部から巡査に格下げされてて飛ばされてきたウェブスター。こちらも寝る暇もない程こき使われて、ロートルなフロストの仕事ぶりに呆れ、やっぱりアレン警部の部下になっていたらと思いつつ、終章ではフロストのある種の有能さを認めたようであります。

 どちらの物語でも、警察内部での不祥事が絡み、それをフロストが人情味溢れる方法で解決するのでありまして、アレン警部や、フロストを何とかクビにしたい乙にすましたマレット警視などなら、こういう解決はありえないだろなぁ〜という巧みな解決。

 ただし、フロストその人は、ドジマヌケが発端で「勇気を称えて」女王陛下から頂戴した勲章を引き出しに放りいれ、権威主義の上司の意見を曲げさせる時だけ使う位で、恩着せることもなく、手柄を同僚のハンロン刑事に譲ってしまうし、上昇志向もなく、淡々と生きる、ある意味、浮かばれない人。でも、その浮かばれなさを嘆くこともなく、コツコツと(支離滅裂でもあるが)地道に捜査する、勤勉な日本人には極めて共感を寄せられ易いタイプなのであります。

 大英帝国の繁栄も、日本の繁栄も、こういう「華やかな座に呼ばれたりするような派手な形では報われないかも知れないけれどやるべき事をやる」人々がいての事・・・そういう人たちを使い捨てるような世の中になっているのは、昨今の状況を見て明らか。フロストみたいな人間界の中核をなす、ふまじめそうで、実は真摯な人間がいなくなったら、マレットやアレンのように人情の機微より効率優先、庶民は問題外という腐ったエリート気取りか、あるいは、額に汗をするのがイヤだから、人から毟り取ろうという人間だけになっちゃうではないのと懸念しつつ読んだのです。

 とにかく面白い。次はこれらを借りよう(買うとは言えない私。もぉ本を入れるスペースがないのです)。著者が亡くなり、あと2〜3作位しか残っていないそうで残念です。




人気blogランキングへ