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金閣寺と言うと十年位前に拝観した時に池の周りに「金閣寺では有りません。鹿苑寺の金閣です」と言う看板が据えてあった事がものすご〜く意固地な感じがして印象的でした。

その時に「今更無理無理、世界の三島由紀夫が金閣寺って作品書いちゃったんだから」と毎度の事ながらツッコミを入れていましたが、その三島由紀夫の作品を宮本亜門氏が演出、森田剛さん主演の舞台を観にお初に赤坂アクトシアターに行きました。

チケットはラッキー!当選品のいただきもの
 近所の友人が付き合ってくれて、二人で赤坂見附で降りますと………あああ、私は浦島太郎だわ。

バブルの時期に散々地上げされ、バブル弾けてどうとやらと聞いてはいましたが、かつてのメインストリートの風景は伊勢佐木町とかなり似通った雰囲気で、でも、伊勢佐木町ほど安いぞ!や老舗頑張ってます!が感じられない、いまいち活気に欠ける印象で驚きました。

そんな中、燦然と輝いていて大変身がTBS界わい。益々浦島太郎気分が深まりましたが、アクトシアターはその一角にございました。

2月なのに、まるでクリスマスのミッドタウンから借りてきたようなイルミネーションが煌々と………LEDなんでしょうが、パッと見、節電はどこの国の話なんだぁ?と言う感じです。

OL時代に何度か行った懐かしいインド料理店が階数を変えて健在。軽く食べていざ観劇へ。

二階席の前から三番目の中ほどでまずまずですが、最近またまた視力が落ちているのを国体観戦で実感した身なので、100均オペラグラスが無いと出演者の表情が分かりません(泣)。

舞台は終始緊迫感に満ちていて、三時間の長さですが、睡魔に襲われる事も無かったです。

簡単な舞台装置を時にズリズリ出演者自身が動かし、ライティングと音、金閣寺を象徴する鳳凰役の俳優さんのビィィィンと言うわざとに耳障りで不思議な歌などで、悩める主人公が、金閣寺放火に向けて気持ちが高ぶって行く様を描いています。

吃音にコンプレックスが有り、人と親しく交われなかった主人公は修行僧同士として出会った明るい鶴川、仏教系の大学進学後に出会った脚に障がいを持ちながら、その事を利用してしたたかに生きる溝口の二人に影響を受ける一方で、俗物な寺のトップである老師には軽蔑の念を抱きます。

そもそも、病弱な僧侶だった父が、母親の不倫の場面を息子に見せまいとした欺瞞や母親に対する不信が、吃音と言う障がいと絡み合って、非常に生き辛い青少年期になっているのに、寺には救いが無いのです。

父親が好きだった金閣寺を初めて見て、少しも美しいと思わなかったけれど、その金閣寺が彼が思いを満たそうとする都度現れ、邪魔をする時のライティングはザワザワと不穏だし、鳳凰の出す音は異様で粟立つ内面を象徴しているようです。

いよいよ放火のシーンの眩しい事。ギラギラと反射して本当に燃えているようです。

森田剛君、俳優としては大河ドラマの「毛利元就」の子ども時代で初めて見ましたが、あの時は視聴率稼ぎにジャニーズのアイドルをと言う感じでしたが、今日の悩める主人公の姿は、アイドルの影は無く、いじいじと悩みながら芯がある青年を好演、立派な俳優になりました。

助演の若手も熱演でしたし、ベテランもいい味出していました。

作品を読んだ時には、若かった事もあり、金閣寺放火と言う重罪の方に目が行きましたが、今日の舞台を見ると、その行為を是とする訳にはいかないけれど、放火に至る気持ちと言うのは分かりました。

もっとも、当時も今も、高僧や寺をこのような描かれ方をしたら鹿苑寺としては不愉快だろうなと言う思いは変わりません。

だから、冒頭に書いた「金閣寺では有りません」なのかもと改めて思いました。


なるほど〜、これが宮本亜門さんの演出なのね。

友人がとても喜んでくれたのも良かったし、今日も楽しい1日でした。(^_^)v

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