水曜レディースデー狙いで、久しぶりにシネマ・ジャック&ベティでジャンヌ・モロー主演の「クロワッサンで朝食を」を友人と誘い合わせて見ました。

 85歳になった大女優と、自分の青春を重ね合わせる方が多かったのか、それとも、レディースデーだからか、テーマが高齢者がらみだからだったのか、とにかく、中高年女性が多く、見やすい席はほぼ埋まる大盛況でした。ジャック&ベティ、座席指定じゃないところが好きなんですが、こう埋まるのを見るのは、ボリウッド映画の大ヒット作「きっとうまくいく」や、昨年の「プリンセス・カイウラニ」以来でございました(ワタシが見たのに限っての話)。


 映画はエストニアの家庭のシーンから始まります。

 凍結した路上で、ぐでんぐでんの酔っ払いに声を掛けられる女性。変質者か?と思いきや、それは妹のだんなだったようで、認知症の母親の介護をしている中年女性、アンヌは、エロオヤジの義弟に迫られ、実母からは「あんた誰?」状態で、相当に疲れている様子。
 ところが、その母は亡くなってしまい、以前、職員をしていた介護事業所の口利きで、パリに住むエストニア出身の高齢女性の世話をしないかという話が舞い込みます。

 子どもたちは既に独立。夫とは離婚。寄る辺ないアンヌが娘に相談すると「いいじゃない、チャンスよ」とけしかけられ、降り立ったパリの空港。「雇い主のフリーダは皮肉屋で、扱いが難しいかもしれないけれど」と言って案内した中年男性はカフェの経営者ステファン。

 そのフリーダを演じたのがジャンヌ・モロー。ハスキーボイスは人生を重ねて、どすの利いた(失礼!)しかし、非常に張りのあるよく通る声です。気まぐれ、わがまま。人の世話を受けなきゃ生きていけないのに、家政婦は要らない、次いで、せっかくエストニア風の嘲笑を用意したアンヌにこんな朝食は嫌だとのたまいます。ステファンによると、フリーダはクロワッサンとカフェオレが朝ごはんだったのです。

 日本語タイトルの「クロワッサンで朝食を」は、スーパーで朝食のクロワッサンを買ったアンヌに対して「こんなプラスティックは食べられない、ちゃんとパン屋で買わなくちゃ」と言った辺りから来ているようです。

 めげそうになるアンヌ。しかし、フランス語を習うほど憧れながら、一度も訪問したことがなかったパリの街を、一人で散歩し、エッフェル塔や凱旋門などを見、故郷の地味な暮らしでは接することがなかった、おしゃれなブティックのショーウィンドウを覗いたりします。

 孤独で息子と思しきステファンの来訪を楽しみにするフリーダ。しかし、この二人は親子ではなく、かつての愛人。富裕な年上の男性と結婚したフリーダがパトロンとしてカフェを出店させた恩義がありました。ステファンの恋路に対し嫉妬しながらも、受け入れざるを得ないフリーダ。

 エストニアの教会の信者として、恐らくは謹厳に暮らしてきたアンヌにとっては、フリーダの奔放さは、そのわがままさと一緒になって、びっくり状態だったに違いありません。

 孤独でわがまま勝手なフリーダも、徐々にアンヌを受け入れて、スーツケースひとつに地味な服を詰めてきたアンヌに「私よりずっと似合う」とバーバリーと思しきトレンチをあげたり、いい感じになっていくのですが・・・

 寝巻きでごろごろしていないときのフリーダ。ジャンヌ自身がシャネルと交流があり、手持ちの衣装だそうですが、なるほど〜、シャネルって素敵ね、普遍的でエイジレスなデザインなんだわと思わせる着こなしです。

 あまりいろいろ書くとネタばれだから、この辺りで・・・


 さくっと言ってしまうと、同じフランス映画の大ヒット作「最強のふたり」と男女の構成は逆ですが、設定は若干似ています。すなわちお金持ちに、移民系の人物がお仕えするというパターン。ただし、「最強のふたり」は障碍を得てしまった富裕な中年男性と、黒人系の青年で、年齢的にも体力十分で疾走感がありました。「クロワッサン」のほうは85歳の後期高齢者と、人生相当疲れた中年女性という組み合わせですので、疾走感ありません(笑)。ただし、人生の機微の描き方、ちょっとしたしぐさや表情で語らせる手法はこちらの方がきめ細かい感じですね。

 フランスって結構階級社会だよねと、もろもろの作品を見ていて思います。

 日本ではお嬢様にお仕えする執事がなんていうと、「謎解きはディナーの後に」のようなコメディタッチで、かなりデフォルメしないと、イヤミに感じられてしまいますが、この作品がイヤミに感じられないのは、よその国の出来事で、何でもありと思えるからなのでしょうか?

 ジャンヌが演じたフリーダ。致し方ないと思いながらも、年下のステファンの恋愛に妬かずにはいられない。作品中で描かれているエストニア出身者は、奔放なフリーダが許せない様子で、恐らくは、年相応とか、いつまでも女を捨てないフリーダに苦々しい想いを抱いているはずで・・・どっか日本的であります、いや、少なくとも、私の感性に近いです(笑)。

 欧米では、我が家も含めた日本人の中年夫婦にありがちな「亭主元気で留守が良いヽ(^o^)丿」ならとっくに結婚生活は破綻していると言われますが、本当に女である事をいつまでも捨てないんだなぁ〜とフリーダを見ていて思いました。

 ヘタをすりゃ色狂いのばあさんとなりかねないところを、その一歩手前で抑えているのはジャンヌ・モローの大看板のかもし出す風格ですね。私は、冴えない地味な(実はスタイルはすごくいい方ですが)風貌から、だんだんに美しくなっていくアンヌ役の女優さんも、とても良かったと思います(ライネ・マギさんと言ってエストニアの女優さんだそうです)。



 さ〜て、映画の後、とっくに女を捨ててる(!?)オバチャンである私は、そうではないであろう友人と一緒にホテルマイステイズの阿蘇商会で食べ放題に興じました。

 阿蘇商会、前回はとても空いていて「大丈夫かよ?」でしたが、今回は適度に賑わっていて、ちょうどいい雰囲気でした。もしかして、映画の後に寄られた方が多いのかな? あまりに混んで入れなくなるのもこまるじょ〜。

 今日のヒットはかりかりさくさくのアジフライ! この前行ったときとまた違うメニュー。映画の事をご存知なのかどうか、クロワッサンサンドというクロワッサンに果物をはさんだのもあって、おなかいっぱいといいつつ食べちゃった。(^^ゞ 時間制限無しで1200円で、明るくて綺麗。いろいろ食べられてうれしいから、お近くに来られたらお勧めですよん♪

 友人とのおしゃべりも楽しく、今日も楽しい1日でした!


・・・ところで、偶然ですが、エストニア出身の元大関把瑠都。大関復帰を目指していたけれど、膝の怪我が治らず、引退表明をしたんですね。残念ですが、お疲れ様でした。 今日はエストニアにご縁がのある日でした。

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