水曜は整理券発行の様子に恐れをなし、大統領の料理人を見たシネマ・ジャック&べティ。

五本観ると一本無料の特典で、何でもない日に観ることにしました。

が、やっぱり整理券。何でもない日にしては七割以上席が埋まっていました。

物語はナチ犯罪人、アイヒマンが戦後15年程の逃亡の後に捕獲され、イスラエルで行われた裁判の傍聴を希望した高名な政治哲学者ハンナアーレントが書き上げた傍聴レポートが物議を醸したと言う史実によっています。

自身がユダヤ人で、ナチの傀儡政権下のフランスでユダヤ人キャンプに収用された経験が有り、高名な哲学者ハイデッカーの愛弟子であったハンナに、マスコミや大学の同僚、多くのユダヤ人が期待しますが・・・・

ハンナの視点は悪や犯罪に対する追及に重きが置かれ、人々の期待するナチバッシングに走らず、それどころか読み方によってはユダヤ人に対する侮辱にも取れる表現で書かれていたために、熾烈なバッシングに遭います。

ハンナは考えることをやめ、すなわち人間であることをやめた人間は、罪の意識すらなく重罪を犯すと説いているのですが、アイヒマンを極悪非道と言う代わりに平凡な、考えることを放棄した役人と言った事が世間には受け入れられなかったのです。

私自身はハンナの発言にすごく頷けます。

今の日本は、かつての日本と極めて似ているようで、威勢が良いことを言って、引っ張ってくれるリーダーを望む人も多いようですが、大東亜共栄圏、イケイケドンドンの掛け声に、自分の頭で考えるのを停止、長いものに巻かれた結果がもたらした惨禍が忘れられているようです。

創作の現場は、特に言論の自由に危機感を抱き、マスコミも大政翼賛してしまった過去を悔いている、同じ轍を踏むまいと努力している・・・・と考えたいです(けど、マスコミについては正直、危ぶんでいます)。

身近に見せてくれた思考停止、思考放棄については、ごく最近も、朝ドラで国防婦人会のリーダーは、トンでもレシピのパン作りをめ以子に強要しています。

昨夏観た映画「少年H」のお父さんは熱狂的思考停止の中で、ちゃんと考えられる人でしたが、暴力の前には口をつぐまずにはいられませんでした。

思考停止は、ある点では楽です。

もし、リーダーが本当にしっかりと先を見通せ、自分やその圏族の利益優先ではなくて、弱者にも目配り出来る、神様みたいな人ならばね・・・・・

でも、人は全方向完璧な神様にはなれないし、崇高な理想を掲げていたはずの国家が、結局は恐怖政治を敷く独裁国家になった事例が多いのは歴史を学んだ人ならば知るところです。


ハンナアーレントは地味で重たい作品ですが、それでも多くの人が見に来るのは、日本の先行きに思考放棄、思考停止がどれだけ危険をもたらすか、考えたい人がたくさんいるからではないかと思いました。

平日の昼間なので、圧倒的にシニア率高かったですが、この作品、若い世代にこそ見て欲しいです。

喫煙シーンがやたらと多いから、うるさ方が、こだわってケチをつけそうなのが心配ですが、それは時代背景を説明すれば済む事です。木を見て森を見ずこそ、思考停止の最たるものですぞ!

そして日本はナチスと盟友であったことや戦争犯罪についても知る機会にして欲しいです。