長男が大学入学を機に家を出てから10年近くなります。

 仕事が忙しいのと、恐らくは借りている部屋が利便性に富み、居心地が良いからでしょうか、帰宅するのは一年で片手で足りてしまうほど少なく、それもゲリラ的に突然現れ、翌日には出てしまうようなパターンになっています。

  (ご経験の方にはお分かりかと思いますが、四人家族に3LDKというのは、今の時代、なかなか使いにくく、私はひそかにスタンダードと見なされているらしい3LDKもこども一人が限度という少子化の原因の一つではないかと思っています。)

  なもので、長男が帰宅時は明け渡すものの、今は元長男の小部屋を私物化している身です。
  
   
  バブルの走りに建てられた我が家。高騰しつつある建築資材のコストをおさえようとしたのか、部屋によりエアコンやら便器がビミョーに違っていたり、大手不動産会社の分譲だというのに、かなり??なところがありますが、4.2帖という実に半端なサイズで収納が一切ない小部屋も、その一つと言えそうで、そこが今の私の隠れ部屋になっているのです。

  狭くて収納部分がないので、惨憺たる有様ですが、本棚、ベッド、折りたたみ机と椅子、パソコンにプリンター、さらになかなか処分出来ないガラクタに囲まれ、ナルニア国ものがたりの「魔術師のおい」のポリー風に言えば、密輸人の洞穴になっています(笑)。

  その狭い狭い部屋が、今日は気付いたら職人部屋化していました。

  何しろ、平日が日曜と化した方がリビングに鎮座しているので、食卓を使う訳には行かないので、手ぬい作業がリビングでは出来ません。

  でも、急ぎ作りたい物があり、折りたたみのローテーブル(何と、普段は単身赴任から家人持ち帰りの折りたたみ机を利用し、更に引き出物ギフトブックから、散々悩んで注文した折りたたみローテーブルまであるのです💦)を引っ張り出して、裁縫ポーチとミニアイロン、ミニアイロン台、布地やパーツを持ち込み、ごちゃごちゃさせながら、チクチクしました。

  最初のうちは、狭い部屋で出来るんかい?と心配しながらでしたが、そのうちに、ハッと思い出しました。

  亡き祖母の事です。

  本人が文句を言えない身になったので、今だから言いますが、祖母は一時期、生活の足しとして人形を作っていた時期がありました。

  一つ一つ、着物の柄や表情は違い、二つと同じものは無かった、という点では作家の仕事そのものでしたが、ぱっと見には、ほぼ同じサイズで、職人技に見えたに違いありません。いくつもいくつも作って、伊豆の有名旅館や、帝国ホテルのアーケードや、銀座の和小物店等に置いて貰っていたのを覚えています(フランク・ロイド・ライトの建物だった時代の帝国ホテルの記憶がほのかに残っています)。

  祖母が人形を作るのはごく小さなスペースで、店に置いて貰うのをやめて、頼まれた分を作ったり、自宅で教えるようになってからは、三畳の部屋に古い裁縫机を置き、畳針をはじめとする針を刺した針山、目打ち、ボンド、作った頭を刺す円筒形にした藁束、そして、様々なちりめん、絹ジョーゼット等を入れた箪笥を置いた部屋にこもっていました。

  祖母は作家でしたので、彼女自身のオリジナルでしたが、私はオリジナルでは作れません。全てテキスト頼りで、たま〜に基本を崩して遊ぶレベルです。

  思えば母もそのタイプ。私よりはるかに手先が器用で美しい刺繍が出来る人でしたが、やはりテキストの要る人でした。オリジナリティがなかったのでしょう、幼い私に絵を書かせて、それを図案にしたことも記憶にあります。一回こっきりでしたが。

  どうやら、祖母、母、私の三代にはちょっとした職人気質のDNAが通っているようです。

  
  テレビや映画等で職人さんの仕事場を見ても、手仕事系の場合は意外に狭い範囲で動いている方が多いように思います。だだっ広いより、手狭な方が集中できるのではないでしょうか?

  ごちゃごちゃの部屋で針仕事なので、針を落としたら大変!と、そこだけは肝に銘じましたが、狭いのではという懸念は作業中は吹っ飛んでしまっていました。どうやら集中出来ていたようです。

  それと共に、手ぬいの良さを改めて感じました。型紙を要する衣類の裁断をしなくてはな時は別でしょうけれど、小物を作ったり、ただ縫うだけならば、広い場所が要らないんですよね。

  これがミシンならば、いくらなんでも狭すぎたし、収拾がつかなくなったかも知れません。

  という訳で、今日完成したのはこれです。ぺたんこ手提げ三作め。

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 先月末に鎌倉スワニーで買ったはぎれに、前期に作ったバッグで使ったグログランリボンの残りがちょうど合いました。

  そして、未完成がこちら。楽天で注文したグログランリボンの到着待ちで、こちらもスワニーのはぎれ。スワニーオリジナル生地ですが、藍っぽくて和風に見えますね。

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  出来るところまででおしまいにして、手ぬい関係の物を片付け、どうやら無事に寝られそうな状態には戻りました。