バレンタインデーとは無縁の我が家は静かな、そして、とても二月とは思えない暖かさの中で過ごした土曜日でありました。

この頃、ドラマを見る余裕が出来まして、土曜時代劇の浪花の華を見て、しばし休憩の後にお買い物という作品を見ました。

のどかな農村部で暮らす老夫婦。会話のテンポが合わなかったり、互いに独りよがりな部分も出てきているけれど、ほのぼのといい雰囲気。

かつてカメラが好きで、妻の治療費捻出の為、売り払ってしまった事のあるおじいさんにカメラ店からの茶封筒に入った地味なダイレクトメールが届いた事から、二人の旅が始まります。

久しぶりの大都会へのお出掛けに備え、急勾配の神社の石段でトレーニングするおじいさん。見守るおばあさん。折々に出会う村の人たち。

最初は杖にすがりつくようにして歩いていたおじいさん。いよいよお目当てのヴィンテージカメラの展示会を目指して渋谷に行きます。

途中の電車内で巡回の車掌さんに見せなくてはいけない切符がどこかに行ってしまったり、今風のカフェでなかなか注文が出来ず、後ろに行列が出来てしまったり、プラスチックで固められたような飲み物が飲めなかったり…と、今の世の中がいかに老人には過ごし辛いかを感じさせつつ、笑いに包んで表現していて、とてもいい雰囲気です。

おばあさんには興味が持てず、待ちくたびれる中、散々迷った挙げ句、お買い物をしたおじいさんの嬉しそうな事。

おじいさんの散財のためにホテル代にも事欠く状態になった二人は、忙しいだろうからと遠慮していた孫娘に世話になります。

現代っ子の孫娘の暮らしは老夫婦の暮らしとは全く違い、互いに戸惑う事もあるもののあたたかい一夜を過ごします。

翌日、壊されてしまったのではと心配するおばあさんの希望で訪れた東京駅。そこは二人にとって何気なくささやかな、でも大事な思い出がある場所でした。



という淡々としたストーリーですが、久米明さんが演じたおじいさんが素晴らしかったです。実際の久米さんは鶴瓶の家族に乾杯のあたたかみのあるナレーションでテンポの良い語りをなさっていますが、この作品では、ちょっとズレた、昔ながらの威張った、でも実は奥さんに仕切られているおじいさんを実に自然に、チャーミングに演じておられました。

孫娘の市川さんもぶっきらぼうだけど、あたたかい女性を好演していました。

中編映画のような見ごたえのある作品でした。

ピアノとコントラバス(かな?)だけのシンプルな音楽も、人生の最終章を迎えたおじいさんとおばあさんの諸々の欲や葛藤を乗り越えた愛をうまく描いていました。


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