今日は地元医師会の医療を考える集いの一環でマイケル・ムーア監督の問題作「シッコ」を友人と一緒に見ました。公会堂を使い、無料なのはありがたかったのですが・・・

 随分前から開場していたのに、時間配分が下手で(さすが、浮世離れしたお医者さんの企画だっ!と言うと、ヒンシュク買いますかねぇ (^^ゞ)一番見たかったラスト20分ほどをカットされてしまいました。(T_T)

 最後はアメリカの敵国であるはずのキューバの医療で救われるというオチだそうでして、以前、献本で読んだキューバの医療をレポートした本の前書きにシッコの事を引用してあった訳です。

 医療崩壊の原因は、保険会社。売る時は「どんな人にも」「どんな状況にも」補償があるとうたいながら、実際は殆ど難癖としか思えない過去のささやかな病気の申告漏れなどを理由に給付金を出さない。結果、多大な医療費の請求が行われ、まともな医療は行われず、支払いが出来ない患者は容赦無くゴミのように外に出してしまう実情と、対するヨーロッパやカナダの医療の充実を紹介していました。

 医師会主催の理由は、今の日本の方向性がアメリカを目指しているから。別のルート(お医者さんの奥様)からもシッコの鑑賞を薦められ、「今の日本の経済界の重鎮に保険会社の人がいるので、儲ける為に健康保険制度を貶めて、民間生保に移行させようとしている」と怒りを込めて言われました。
 つい昨日も救急医療を拒まれ、たらいまわしの末、出産された妊婦さんがわが子の顔を見ることもなく亡くなったという事件の報道がされたばかりの日本。また、地元紙では某自治体がお産の受け入れを中止した旨も報道していました。

 アメリカの医療の現実は更に痛々しいばかり。

 確かに、無駄な医療費が多いのは分かります。例えば、データを共有しないで、ひとつの科から他へ移るごとに検査漬け。薬もいらないものを出したり、こちらから言わない限り、出来るだけ保険の点数が高い薬が出たりします。また、私が実際に耳にしたことがありますが「今日は○○ちゃん来ないね」「具合が悪いんだよ」という待合室での高齢者の会話に見られるような医療機関のサロン化なども問題ではありましょう。

 しかし! お金のあるなしで門前払いをされる体制なんか、やなこった!

 近年の日本。美容整形外科、歯科医に眼科、皮膚科など、殆どの場合命に別状がない、緊急性が薄い、あるいは保険外で大もうけできる診療科目の医師ばかりが増えていて、産科や小児科に麻酔科など、労多く報われることの少ない科目に人気がありません。

 それも、医科大に入るためのコストを考えるとむべなるかなというところもありますが、その医科大に入れるのは金持ちの子弟ばかりとなってしまっては・・・庶民の痛みは益々分からないでしょう。

 もうひとつ、マイケル・ムーアらしい痛烈な体制批判は「恐怖心を抱かせ、無力感を抱かせる」事による国民の支配。実際のところ100%すんなり信じて良いのかは分かりませんが、取材されているフランスに暮らすアメリカ人たちが幸せを満喫しつつ、言ったのは「フランスでは国民を政府が恐れているから」で、逆にアメリカでは国民が政府を恐れているから、不幸な医療制度が温存されているのだそうです。

 大学を出る頃には借金まみれ。そうすれば、勤勉忠実な従業員とならざるを得ないので企業にとって甚だ都合が良いという場面も過去映像との巧みなコラージュで表現されていましたが、まさに、今日本が向かっている方向そのものです。

 借金をキャッシングなんて言い換えた糖衣をかけて庶民に勧める国って、どう考えてもまともではありません(だから、ワタシャ、アフィリエイトには単なるクレジットカードならありだけど、カードローンものだけは絶対に貼らないつもりですわ)。

 この映画が撮られた頃にはサブプライムローンの破綻はまだ表面化していなかった時代ですが、医療費が払えずに家を売らなくてはならなかった気の毒な中年夫婦が出ていました。今ならその家も売れない訳で、更なる悲惨な状況になっていたでしょう。

 また、9・11で讃えられたのは公的機関に属していた消防士や救命士等だけで、善意で作業に参加した人たちで、過酷な作業を通し気管支等に重篤な症状を負ってしまった人たちには何の支援もないというのも考えさせられました。

 
 見終わった後、友だちと「どうなるんだ、これからの日本」とため息が漏れてしまいました。

 グロバーリズムを叫んで、結果はどうなったか。もう既に分かっています。因習、不合理等と呼んで切り捨てて来たものが無くなったら、かなりズタズタ。

  弊害があると分かっていても、どこまでもアメリカに追従したい日本。残念ながら・・・この国は本当のところはアメリカの同盟国と言えば美しいけれど、限りなく植民地に近い存在なんだろうと思わざるを得ません。


 子ども達を国民総おバカ化計画から守り、一握りの礼節を知らない頭でっかちのエリートたちや恥知らずの儲け主義者たちが富を握り締める世の中にならないようにするためにはどうしたらいいのでしょうね。

 私が出来る事は、拙い私の能力の範囲で、本当にささやかな事ですが、知らないと損する事、困る事、知った方が良い事を周囲にお知らせする事かなぁと思います。

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