お友だちの誘いで、渋谷、Bunkamuraのル・シネマで上映中の「シャネル&ストラヴィンスキー」を見に行きました。

実はBunkamuraは初めて。システムが分からない。時間前に行くと、ビルの前に長蛇の列。自宅の近い友人が先に並んでいてくれたのだけれど「劇場の収容人数を考えると、こりゃ、ひょっとして4人分チケット買えないかも?」と慌ててしまいました。それで、後から来る予定の二人の友人にメールして「もしも4枚買えなかったらどうする?」なんて尋ねてみたり、あたふた。

でも、実際は隣の部屋で上映のヴィクトリア女王の映画を見ようと並んでいた人が多かったようで、幸いに比較的早い番号の券を買えました。

Bunkamuraって、先ず並び、エレベーターホールに誘導され、少人数ずつ乗って、映画館のあるフロアで更に並び・・・と、火曜日は1000円で鑑賞可能な日という事もあるにせよ、なかなかスリリングな人だかりなのでした。

ま、人の集まる渋谷だからかな〜。
物語は「春の祭典」が絶不評だったバレエの舞台から始まりまして、むか〜し見た映画「ニジンスキー」の事を思い出しました。ディアゲレフはあの時と同じに(多分、本人の写真が残っているからなのでしょうけれど)黒髪にスカンクの尾のような白髪が混じっている独特の髪型で、ニジンスキーの振り付けがあまりに独創的過ぎて、観衆に受け入れられず、音楽が悪いのだ、振り付けが悪いのだとニジンスキーとストラヴィンスキーが罵りあう場面も・・・

シャネルは4人の子どものいるストラヴィンスキーに援助を申し出て、郊外の瀟洒な館を提供するものの、いつしか二人は恋仲に・・・そして、病弱ながら、ストラヴィンスキーの譜面の清書をして助けになっていた妻はそれに気付き・・・という、いわば不倫ストーリーなのであります。

ぶっちゃけ言ってしまうと、この映画はシャネルを讃える系だと思うので、ストラヴィンスキーはあかんたれに描かれていると思うのであります。シャネルに惹かれるけれど、彼の音楽を支える妻が不倫に気付いて去ると言うと、かなり動揺してしまい、でも、シャネルを求めてみたり・・・

公式サイトを見ると、主役の二人だけが紹介されているけれど、私にはモナリザみたいな眉毛をした奥さんを演じた女優さん(エレーナ・モロゾヴァ)がとても印象的でした。「風と共に去りぬ」のメラニータイプ。ただし、メラニーよりもっと病弱で、もっと激しく、思いのたけをシャネルに伝えています。

シャネルは背徳と言われることに対して何とも思わない、私は自立した女、実力で今の地位を勝ち取ったから、と堂々と言い、しかも、女としての魅力を最大限に発揮しようとするしたたかな女性。だからこそ、当時としては斬新、今に至るまで古びないシャネルファッションの生みの親となれたのでしょう。賃上げを求める店のお針子さんたちには冷然とNOを言いながら、ディアゲレフには匿名条件でポンと大金を出す。ストラヴィンスキーとの別れも彼女の方が潔い。

時代が時代ですから、冒頭からやたらとタバコが出まくっていて、今なら考えられない、皆が揃ったテーブルで、食事前の一服というシーンも度々ありますけれど(あの頃は自立した女性の象徴のひとつが喫煙だったのでしょうから)、それがコムスメのツッパリとは違い、サマになっているのはさすがです。

ラストシーン、歳月を経た二人がそれぞれのかつての場面を思い出す部分、シャネルの特殊メイクがすごかった。あまりにリアルでしたね〜。

それにしても、この二人、本当にこのような関係があったのかなぁ?(小説がベースの映画のようですから、推測の部分が大きいのでは?と勝手に推測。じゃないと奥さんがあんまりかわいそうだもん)

シャネルはともかく、ストラヴィンスキーについてはもっともっと昔の人というイメージがありましたが、二人とも同じ年、1971年に亡くなっているのですね。


映画の後はbunkamuraと一続きの東急本店の8階でランチ。友人が印刷して来てくれたぐるなびクーポンでワインでかんぱ〜い! 楽しくお喋りしました。

渋谷の街を歩くのは久しぶり(去年は渋谷より京都の方がよほど多く行ったぞ(笑))。小学生時代の半分強を過ごし、学生時代も通過していた街で、なじみはありますし、土地勘はまだまだ働きますが、八ヶ岳や横須賀のように、ふるさと、あるいはふるさとみたいとか、しみじみとした懐かしさを感じさせてくれる場所ではなく「仕方なく家庭の都合で引っ張られて来た」、私にとっては借り物の場所だなぁ〜と改めて思いました。^_^;