時々、連続になりますが、今日もまた映画を見ました。

 かねてより見たかった「道、白磁の人」。私のハンドルの由来になっている八ヶ岳南麓に生まれた浅川巧の広範性を描いた作品です。

 日韓併合時代、朝鮮半島の人々に対し、心ないふるまい、あるいはそれ以上の残酷な仕打ちをする人も多かった中、人間として対等なつきあいをしたいと思い、また同胞の振る舞いに対する贖罪の念からも地元の人々によくした事で慕われた浅川巧。植林の仕事で赴任したものの、埋もれていた白磁の美に目覚め、民芸運動に多大な影響を与えた人物です。

 というのは、割と最近知ったこと。民芸運動については、祖母や母の影響で、子どもの頃から東京の民芸館に連れて行かれたり、奈良の安堵町の富本憲吉の家に行ったり・・・旅先では民芸館の類や民芸家具を見たり、祖母が買っていた廃刊になってしまった「銀花」という雑誌をしばしば見ていたり・・・大人になっては、京都で河井寛次郎記念館に寄ったり、進々堂や鍵善の黒田辰秋の家具や器を見たりしていましたが、地元八ヶ岳にこういう立派な人がいたと言うのは、多分、祖母は知らないまま逝ってしまったと思います。
 私の悪い癖で、ついつい突っ込みを入れてみてしまうんですが・・・

 冒頭、八ヶ岳南麓の風景が出ますが。「あの富士山はCG処理しているよ。くっきりし過ぎて、サイズも違う」と早速つっこんでます。(^^ゞ

 ここで吉沢悠さん演じる浅川巧と、まだ亀治郎のまんまの現猿之助さんが登場。これから林業をしに朝鮮にわたる巧と、巧の妻となる妹の事を話しています。開けた風景で・・・多分、これは県営牧場かなぁ?と当たりをつけてました。

 南麓の風景が出てくるのは、病弱だった巧の妻が死を迎えるので、日本に戻った時の事。それと、後妻となった女性が柳宗悦の家で巧との結婚を勧められる場面くらいです。ちなみに、柳さんちはポールラッシュ博士の記念館ですね(笑)。

 先妻さんの骨壷をあける場面が出て来ますが・・・これも私が高校時代は土葬が主流だった八ヶ岳南麓なので、ん?と首を傾げましたが、もし奥さんが伝染病で亡くなっていたのなら(そうは描かれていませんが)甲府盆地まで出向いての火葬はあり得るかも知れません。


 とまぁ、最初につっこみどころを書いてしまいましたが、物語の軸は吉沢さん演じる巧と、ペ・スビンさん演じるイ・チョンリムの友情です。

 巧や兄の伯教は現地の人を尊重しているものの、同居の母は酷い事はしないものの、当時の一般的な日本人同様、感情表現の豊かな朝鮮の人々に対し偏見混じりに見ていたりします。

 ですが、最大の悪役は堀部圭亮さん演じる横暴な軍人、小宮でしょう。朝鮮の人たちに酷いだけではなく、現地に溶け込もうとする巧に対しても、おまえなんか朝鮮人以下だと言って暴力を振るいます(パッと見は意地悪なのか?と思っていた田中要次さん演じる巧の上司は逆に、ホントはいい人でした)。

 朝鮮の人たちは暴力で押さえつけられるのでやむを得ず笑顔を向けているだけ、一人いい子ぶってと巧を批判するチョンリムでしたが、誠実で裏表のない巧の事を信頼するようになります。

 しかし、横暴な日本の統治に対する人々の怒りがピークに達し、抗議行動の弾圧など経て、息子が抗日運動に巻き込まれ、その息子をかばうために罪をかぶったチョンリムは投獄されてしまいます。何とか面会にこぎつけた巧に、もう来るなと言うチョンリム。

 チョンリムの立場が一番苦しいでしょうね。日本を憎む同胞と、巧に対する友情で心が引き裂かれるような状態だったのではと思います。

 日本人も荒廃をもたらした当事者である朝鮮の山々に緑を戻したいという巧は大雨の中、苗木の世話をしていて突然倒れ、余命いくばくもないという事で、例外的に再度の面会が許された巧とチョンリムの永訣の前のシーンには泣かされました。間もなく巧はチョンリムとの友情の印に植えた松の根元でほほ笑むように倒れます。

 その後、玉音放送が流れ、日本は敗戦。朝鮮の人々は歓喜に包まれる一方、日本人排斥が始まり、横暴だった小宮はしたたかたたかれ、恐らくその後殺されたのでしょう。暴徒化した人々は妻子が住む巧宅にもやって来ますが、「この家が誰の家かと思っているのだ」といさめる者が現れ、奥さんも「浅川巧の家です」と言うと、暴徒たちは去って行きます。いさめた男は投獄によりすっかり老けこんだチョンリムでした。チョンリムもまた無人となった家の庭の、友情の印の松の根で地面を撫でながら、ほほ笑むのでした。


 父が亡くなる前、戦前、次兄が危篤なので北京に行かなくてはならなくなった時に、朝鮮人と間違えられて「きさまがどうして鉄道に乗るのだ」と列車の中で警官につかまってしまったと言っていました。「自分がだれの身内か言えば直ぐに開放して貰えるのは分かっていたけれど」、いざという時には葵の印籠があるので、どうやらわざと日本人がいかに横柄だったのかを確認していた節があります。到着した北京では痩せたクーリーに乗った日本人が「あっちへ行け」だの「こっちへ進め」だの、無茶苦茶をふっかけていて「だんなさん、もう勘弁して下さい」と泣き声をあげているのが可哀想で、でも、何も出来ず胸が痛んだ・・・と言うのが、ほぼ最後の父との会話でした。

 映画で描かれているようなことは当時は日常茶飯事だったのでしょうね。足を踏んだ側は直ぐに忘れても、踏まれた側は忘れないものです。朝鮮半島の人や、中国の人が、戦後70年近く経っても、日本の旧悪を言うのもやむを得ない部分があると思います。(それにつけても、無差別爆撃をしたり、原爆を落としたアメリカに対して、日本人一般のなんたる寛容さ。確かに占領後に残虐行為は少なく、物資の補給をしてくれたりした事、旧ソ連のシベリア抑留の印象があまりに悪過ぎた結果、相対的にアメリカに対する心情が良くなったという事もありますが、やっぱり「敗戦国」であり、「属国」となってしまっているからなのでしょうね)


 一緒に見に行った友人も山梨県出身ですから、二人で「ちょっと違うよ、あの方言は」とつっこみをいれたりしていましたが、良かったと言ってくれました(この前、八ヶ岳で貰って来た川伯教・巧兄弟資料館のパンフレットと映画のチラシをあげました)。韓流ドラマ大好きな彼女。ペ・スビンさん、いいわ〜との事ですが、もちろん、吉沢さんの誠実さを感じさせる演技も良かったとの事。

 ところで、吉沢さんと言えば、「平清盛」では裏表のある何ともいやらしいお公家さんを演じていますね。お公家メイクのまろ眉になっている事もあって、誠実な巧とはまるで別人。ちなみに悪役小宮を演じた堀部さんも「平清盛」で、誠にいやらしい藤原摂関家の兄を演じていて、清盛繋がりでは二人は似たものキャラなんですが、この映画では180度逆ですね(笑)。巧の先妻さんは朝ドラの「梅ちゃん先生」の女子医専のお仲間、わがままお嬢さんの雪子さんで、ついつい雪子さんと呼んでしまいそうでした。亀治郎さんの出演は大河ドラマ「風林火山」の武田信玄役のロケつながりですかね〜?などなど勝手に妄想しておりました。

 エンドロールに流れたピアノ曲がところどころに挟まれる白磁の画像と合って、静謐な感じがして良かったです。でも、中には、エンドロールを見ないで立ってしまったり、エンドロールならばいいとおしゃべりを始める人がいますが、前者はもったいないし、後者はマナー違反ですな。映画好きならば、最後までちゃんと見ましょうよ!と言いたくなりますです。


 映画の後は・・・半券で割引があるお店で楽しくランチ♪ その後、横浜で途中下車してもろもろの用事をして、今日も楽しい1日なのでした。

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