月曜日に続いて、水曜レディースデーの今日は宮崎アニメの風立ちぬを見に行きました。

  ゼロ戦の設計者、堀越二郎の人生に、風立ちぬの作者、堀辰雄の人生を絡め、このふたりへのオマージュとなっています。

  先日宮崎監督が引退を表明したこともあってか、公開開始から日数が経っていますが、かなり席が埋まっていました。
  軍用機の設計者にまつわる話ではありますが、決して戦争賛美ではなく、見終えれば、むしろ反戦作品と言って良いほどです。

  二郎は要するに、研究者バカと言うタイプ。作るからには最高のものをと言う職人気質もあり、軍用機か否かは二の次です。

  幼い頃から、イタリアの設計者、軍用機カプローニ伯と夢の中で会い、夢を共有する中で、関東大震災で出会った少女、奈穂子と避暑地で再会、愛を育みます。

  しかし奈穂子は結核を病み、山の療養所にひとりで行きます。


・・・・と言うこの場面が、私は個人的感慨無しには見られないのです。

  何回か書いていると思いますが、祖母は堀辰雄さんご本人が、奈穂子のモデルとなった婚約者の矢野綾子さんと、長野県諏訪郡富士見町にある現高原病院に療養されている、まさに同じ時に療養所に滞在していたのです。

  地元民でもなかった我が家が八ケ岳と縁を持ったのは、そもそも祖母が療養所の近隣を散策して、自然美に魅せられてしまったからなのです。

  風立ちぬに書かれていることは、ほぼ事実。作品中に描かれた前途を悲観して死を選んだ外交官、第一発見者は私だと生前祖母は申しておりました。

  数年前まであった当時の療養所の一棟は大変残念ながら取り壊されたそうですが、一度、中を案内してもらったそこは、木造の古い校舎を小ぶりにしたような感じでした。

  アニメの中の療養所は、今の高原病院とその周辺の景色とまるで違いますが、祖母が療養していた頃は、きっとアニメのような風景だったのでしょう。

  祖母も蓑虫みたいにくるまって、日光浴をしたのかどうか、残念ながら、もう確かめられませんが、人妻とは言えまだ二十代だった祖母、本人曰わく、堀辰雄さんの取り巻きの男性達にチヤホヤされたそうです(笑)。

・・・と、かなりな脱線をしてしまうほど、富士見高原療養所には思いがあります(脱線ついでに、もう一つ。今はどうか分かりませんが、宮崎監督の別荘が富士見にあったのは周辺では有名な話でした。あ、もひとつ、ついでに言うと、ヨドバシカメラの創業者は富士見出身です)。

  病を経て、最後の時を過ごしたいと言う二郎と奈穂子。理由も無いのに特高に追われるようになった二郎を離れに住まわせてくれた上司は、結婚もしていない二人を住まわせてやれないと言い、それでは、と即座に上司夫妻を媒酌人として質素な式をして貰う二人。

 悲恋ではありますが、この時代に、とにもかくにも結ばれて、戦いによる理不尽な死で割かれなかっただけ、幸せな二人だったと言えましょう。

  少年H同様、特高と言う暗い響きの存在も出て来ますし、ナウシカのキョシンへイを想わせる不気味な関東大震災の描写もありますが、一見怖そうな上司も、蹴落とし合っても不思議はないライバルである親友も、保養地で出会った不思議なドイツ人紳士も、奈穂子の父親も使用人も、みんないい人だし、カプローニ伯との夢の場面は飛行機バカの夢見る世界がイキアキと描かれ、保養地の自然はリアリティのある美しさです。


   嫌煙関係者から不評の喫煙シーンの多さも、時代を考えると(私自身、受動喫煙は御免蒙りたい方ですが)、むしろカットし過ぎると不自然かも知れません。

  
  とにかく、力作でした。


  この夏は、途中のストーリー運びはどうであれ、見終えれば必ず戦争の愚かしさや虚しさを感じさせてくれる力作が多かったように思います。

   威勢のいい事言っている政治屋、政治家の皆さんにこそ、ドーンとまとめて見ていただきたいですね〜〜。