今年は読んだ本の数もこの10年以上で最低。映画は昨年より本数が減った・・・何しろ体力低下、気力低下(一部例外有(^^ゞ)なので、グレース・オブ・モナコでもって年内は打ち止めかと思っておりましたが、急に元気が出て、久々にジャック&ベティに行ってまいりました。

 で、最初に見たのが「ストックホルムでワルツを

 このところ、昨年の「最後のマイ・ウェイ」や、今年の「ジャージィ・ボーイズ」など、海外のミュージシャンの栄光と挫折をテーマとした作品を見る機会がありましたが、フォーシーズンスはともかく、クロード・フランソワは、聞いたことあるかな?でして、この作品のスウェーデン人のジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドは率直に申しますと・・・知りませんでした。

 冒頭、テイク・ファイブが流れまして・・・ジャズファンの皆様にとっては、甚だ不謹慎でございますが、先ず第一に頭に浮かんだのは・・・・

 というのはさておき、スウェーデンの小さな町で電話交換手をしながら、クラブ歌手として娘を両親に預けてストックホルムで時々歌うヒロインのモニカ。とっても美しい女性であります。

 しかし、モニカの母はともかく、父は幼い孫娘を置いて、不安定な職業である歌手を目指す娘に対して否定的。そんな父にも若いころには夢があったらしいのですが・・・。

 見いだされ、アメリカで唄うチャンスを得たモニカですが、憧れのエラ・フィッツジェラルドからは「人のまねはやめなさい」と厳し事を言われるし、惨憺たる評価で、父親からしたら、それ見たことか状態。

 しかし、その後、徐々に名声を得て、また、娘のためにとインテリの映画監督(それが、当時、年の離れた兄や更に上の年齢の男性がにやにやしていた「私は好奇心の強い女」の監督さんだという(^^;)と同棲し、成功をつかむと豪邸を買ってみたり・・・それでも、父親との溝は埋まらない。

 宣伝費がタダという事で本人の意思と裏腹に出場したユーロビジョンでは何と0点の屈辱。

 このころからモニカは不安定になり、酒から離れられなくなり、自分の本心も偽って行きます。

 う〜ん、この大成功→破滅の縁へ・・・というのは大スターの定番みたいですね。

 一つ気になったのは、時代故、仕方ないのですが、やたらと煙たい映画でございました。

 思えば、1980年台くらいから、インテリで仕事が出来る人間はたばこは吸わないというのが定番化しつつあり、その後、たばこの害悪が説かれるようになりましたが、1970年半ばくらいまでは、主張のある個性的な女性が、たばこをたしなむって感じだったんですよね。その頃に成人、かっこつけて吸い初めて、ヘビースモーカーにって方も結構いらっしゃるかも(笑)。

 女性ばかりの電話交換室に紫煙が立ち込めているなんてシーン、今の時代には考えられませんから、たばこの扱い一つで、時代を感じさせられます(あれだけヘビースモーカーなのに、モニカのお肌がつるつるなのが不思議だぁ〜、ひょっとして撮影用のよく出来た電子たばこか?なんて茶々を入れたりして(笑))。

 紆余曲折を得て、最終的にはハッピーエンドになりますので、皆様、ご安心を!

 最後のマイ・ウェイも演じた俳優さんはクロード・フランソワの曲をすべて覚えたそうですが、この作品も本人の歌を使っているようです。俳優さんとしては、痛し痒しでしょうねぇ。

 さて、続けざまに見たのは、全く雰囲気が異なる作品です。

 「ドライブ・イン蒲生」。実力派若手の染谷将大さんが全くはやらないすすけたドライブインで、やさぐれた姉と、どうしようもない父親と暮らす高校生と、その後を演じています。

 やさぐれ姉は、日台共同作品「南風」で、元気なヒロインを演じた黒川芽以さん。どうしようもないオヤジを永瀬正敏さん。

 バカだと親子して罵り合い、周囲からもバカと言われる蒲生家。父親曰く、蒲生家は「川の中で舟で飲食物売りをしていた家の末裔だ」(この舟の名前を言っているのを直後は覚えていたのに、もう忘れている情けなさ・・・要するに保津川下りで中流域くらいで、す〜っと近づいてきて、ビールやら焼き鳥やらを売っている、ああいう小舟だと思うんですが・・・おおっ、思い出した、「くらわんか舟」でした(^^ゞ)。

 家の中の散らかり具合を見ると、決して汚部屋ではなくて、単に安い家具があるだけで、だらしない家族には見えないのですが、ぎすぎすした雰囲気で、姉ちゃんはヤンキー。弟はノウハウを先輩に仕込まれて半端ヤンキー。二人とも、親がいようが、道路だろうと、たばこを手にして、いっぱしの不良気取りだけれど、本当は心のよりどころが無いんだろうなぁというのが、画面から伝わって来ます。

 先ほど、たばこの話をしましたが、この作品では、たばこは完全に負のイメージを醸し出す小道具になっているのに時代の移り変わりを感じます。

 雨が降る、風が吹くと言っては店をまともに開けないオヤジ(元やっさんらしいです)。細々とパートに行き、世間体を気にする母親。家族のだれもが食育という言葉が必要だなと思わされるレベルの食生活で、一人1個のパンを買いに行った店のオヤジが、本当はおふくろが好きだったんだと妄想を弟にたきつける姉。

 この作品では過去の姿である高校生の2人と、その後、DVを受けている姉と姪と行動を共にする弟の現在を描いています。

 見ていて「そこのみにて光輝く」を思い出しました(鑑賞日の日記はこちらです)

 我が家の購読新聞の毎週木曜日の映画評の中で、今年のベストに選定されていた作品です。なお、あの高倉健さんも駆けつけたという、映画ファンの手作り映画祭であるヨコハマ映画祭でも、「そこのみにて光輝く」は受賞作品です。

 この手の、林真理子さん風に言えば下流の暮らしを営む人たちを描いた作品、見る人たちは、まずもって描かれているタイプではないですね。自分の事は置いておいて、だいたい映画好きで、ちょっと個性的だったり、インテリだったりして、決して、本編で描かれるような、刹那的、流される生活を送るタイプじゃないですわ。そういう意味では、実は上から目線な作品だったりします(う〜、何とかわいくない見方なんでしょう(^^;))。

 黒川芽以さんの寄る辺なさをヤンキーな振る舞いでごまかそうとする姿や、本当はワルとは程遠いのに、一生懸命悪ぶろうとして、でも、ぶり切れない染谷さん。二人とも達者です。

 ドライブインというのが、今はあまり見かけなくなってしまいましたが、姉と姪と一緒の車で立ち寄ったドライブインで、「まずい」と言う姪に、弟が「ドライブインはおいしくしちゃいけないんだ」と諭すシーンが、おかしみもある一方で、なかなか現実的でした。

 私の子どもの頃にはたくさんあったドライブイン。大概は、そこそこお高い割に、味はあまり美味しくなくて、トイレなんかもあまりきれいじゃなくて、でも、当時はトイレを借りる場所がなくて、仕方なしに寄る感じでした。弟君の弁はうなずける!

 だから、ファミレスとかコンビニ、ファーストフードはこれだけ増えちゃって、ドライブインは一部団体さん向けに生き残っているってな感じになったんだと思いますよ。マニュアルで規格化されていて、面白みもないけれど、とりあえず、ぼったくられ感は抱かないですみますからね〜。
 
 最終的に弟は、自分の中にはカスケた家族の血が流れていると認めるのですが、カスケたってな〜んだ? 辞書ページを見ても載ってないのですが、どうやら、さえない、すすけたというか、そんな感じみたいです。どこかの方言でしょうか?

 

 と、全然雰囲気も印象も違う映画2本立てを見終えた時には、冬至直前の空は暮れていて、防寒肌着見に、ユニクロ寄ろうかな?の願望は捨てて、まっすぐおうちに帰ったのでした。

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