さすがにバテ気味ではあったのですが、欲とふたり連れ(と、一緒に八ヶ岳に行った友人は言いつつ、荷物が増えるのにもかかわらず、地元産品をいろいろとお買い上げしてくれてました)で、毎月一日の映画の日狙いで外出です。

  いや、本当は接骨院に行くつもりでしたが、既に人が並んでいて最初のワンクールに入れないのがわかり、ならば映画!と切り替えた次第です。
 まず「トランボ」。脚本家のドルトン・トランボが主人公です。

 思春期に聞いた名前ですが、それは彼にとっては晩年に当たる「ジョニーは戦場に行った」で、作品概要を読んで、四肢切断、触感しか残されていない傷病兵ジョニーが主人公、というのに恐ろしくなり、見ようとはこれっぽっちも思わなかった作品です。

  まだまだ人生初期の私は、そういう紹介のされ方で、リアルな姿や、そこに至る無残な描写があるもんだと思い込んでいましたが、今なら見たかも知れないですね。

  ドルトン・トランボが、実はローマの休日の脚本家だとは、私も知りませんでしたが、公開当時もほとんどの人が知らなかった、それは、米ソ冷戦の時代に吹き荒れた赤狩りと呼ばれた共産主義者弾圧に、ドルトンも引っ掛かったからでした。名前を出せず、友人の名前を借りたのです。
  
  共産主義に共鳴し、資本家に搾取される映画制作現場の縁の下の力持ちの待遇改善を訴えるドルトンはユーモアと機転のきく受け答えが出来るリベラリストですが、映画界における共産主義者撲滅の動きはヒステリックになる一方。

  当時の実際のニュースフィルムも混ざりますが、後に大統領になったロナルド・レーガンや、西部劇の大御所ジョン・ウェインなども弾圧側に周り、またアメリカの良心といった役どころが多かった俳優ジェームス・スチュワートもなかなか過激な発言をしていたりするのが興味深いです。

  ドルトンと仲間の脚本家など10人の映画人が収監され、屈辱的な身体検査を受け、刑期を終えた後には徹底的に干されます。

  ヘレン・ミランが演じるお上品ぶったコラムニストのいやらしいこと!と思わせる演技力がさすがです。

  今の日本もこういう方向に行きそうな懸念を感じさせる、言葉尻を捕らえての弾圧、そしてヘイトスピーチ顔負けの暴言。それをハリウッドの人気俳優が吐き出しているのですから、時代への迎合と考えなしは恐ろしい。

  とにかく安けりゃいいんだよ、とトランボたちに偽名で脚本を書かせるB級映画会社の社長のおかげで食うに困らぬ金は得るものの、家庭崩壊しそうな状態にもなったトランボに手をさしのべたのはいまだ健在というカーク・ダグラスやそのテーマ曲が小塚さんのフリープログラムにも使われた「栄光への脱出」のオットー・プレミンジャー監督。

  カーク・ダグラスが硬骨漢という話は見聞きした事がありますが、こういう事がだったのですね。

  この作品は思想弾圧に対する警鐘になる一方、家族愛の物語でもあり、ダイアン・レイン演じる妻が、時には絶望的になりつつも、しっかりドルトンと家族を守る姿も印象的でした。

  毎度の事ですが、この時代を描く時にも紫煙がすごい。もちろん、映画館だって紫煙漂うのです。ご存知ない方の方が多いでしょうが、私の学生時代くらいまでは場末の、と呼ばれるような町の映画館はタバコの煙モウモウで、それがなくなったのは嬉しいですが、映画館自体が減ってしまったのは寂しいですね。


  さて、ダイソーでお買い物をはさみ(な、何と欲しかった濃紺のバイアステープをやっとこここでゲット!)、次にジャック&ベティよりさらに昭和の町の映画館っぼさを満々とたたえる横浜ニューテアトルで「野生のなまはげ」を鑑賞。

  こちらはいわゆる低予算作品なので、テレビで見かけるような俳優さんは一人も出ていない(と言いきって良いのか、と思う視聴傾向が偏っている私であります)のですが、その分、無理に人気タレントを顔出しさせるような余計なサービスがないし、人気タレントの序列に気を使ってストーリー曲げたな感もなくて、清々しいです。

  罠にかかった野生のなまはげが保護獣として研究施設に送られる途中に檻から逃走、珍獣集めが趣味の悪趣味な成金の依頼で、あの手この手でなまはげを捕獲しようとするはしっこいのと鈍臭いペットショップの兄弟、逃げたなまはげを飼う少年、少年となまはげを守ろうとするなまはげ専門の大学教授が繰り広げるドタバタ→ホロリであります。

  そもそもの設定が荒唐無稽なのだけど、拝金主義や動物保護のありように対するチクンという部分もあり、なかなかに楽しめました。

  真っ赤ないかつい顔に白い四角い牙の面をつけ、動かぬ表情で悪い子はいねぇがと言う唯一の言語をしゃべるだけのなまはげが、少年と心が近づくにつれ、愛すべき存在に見えて来るのが不思議です。

  秋田の山奥になまはげを還してやろう、というシーン。じめじめした石仏の並ぶ、少しおどろおとしい雰囲気の山奥。

  何とエンドロールを見ると、どうやら箱根らしいのです。さすが低予算ならではの工夫!

  主役の少年は、いわゆるイケメン系ではないので、映画だよと思って見ている最初は、いささからしくない等と思ってしまうのですが、物語が動き始めると自然に感じられます。

  教授の超人的なところ、兄ちゃんと呼ばれつつはしこい弟分に引っ張られている食い意地の塊のペットショップ兄のデフォルメっぷりが笑えます。

  小難しい事を考えないで和める映画でした。

   全く持ち味が違う作品、ダイソーお買い物がインターミッションになり良かったです。かなりの規模の他のダイソーでも無かった濃紺のバイアステープが見つかり、ヤマザキとコラボのカンパーニュパンまで売ってる伊勢佐木町のダイソー、恐るべし!