国宝 (上) 青春篇
吉田修一
朝日新聞出版
2018-09-07

国宝 (下) 花道篇
吉田修一
朝日新聞出版
2018-09-07



 火曜日に地区センターで借りた吉田修一の「国宝」が面白くて、昨晩ちらっと読み始めて、今日は午前中から続きを読んで、夕方には上下巻読了!

 老眼が進む、あれやらにゃ、これやらにゃと集中力が切れがちな一方で、一度に複数のことが出来なくなっている昨今、読書量も激減で、小説は手に取っても読了出来ず返却する例が増えていました。

 率直に言うと、いかに読みよさげな文章でも、プラスティック小説と私が勝手に名付けている、売れること、読みやすさを念頭に書かれている感じがする作品は、途中でお手上げ率高いです。

 安直さ、薄さに我慢が出来なくなってしまうのです。読んでいるうちにプラスティック部品をはめ込むようにして「このフレーズ、この展開なら、当たるな」と思いつつ書いてるのでは?と思われて来てしまうのです。

(※ 素材としてのプラスティックの便利さは認めているけれど、本音ではあまり好きじゃないからの命名。もし自分が木材がいやだったら、ウッド小説と名付け、土が嫌いなら、粘土小説とか言っているかも(^^;)

 ですが、手練れと言われるクラスになると、つくりものっぽいやなと思うこともあるけれど読まされてしまう。浅田次郎さんの小説がその代表例です。

 吉田さんは、妻夫木聡さんが金髪になった!と話題になった「悪人」の映画も原作も読みましたが、私の中の分類でいうところのプラスティック小説ではなかったです。登場人物の心の動きや、思い通りに行かない人生の切なさなどに惹き付けられました。

 「国宝」は人間国宝の高みにのぼるほどの歌舞伎役者の生い立ちから、青春時代、修業時代などを、長崎のやくざの抗争、大阪の養父とも思う役者の家でのこと、興行とやくざ者のつながりなどなど一般庶民が知らないが、ありそうだなと思うツボをついてくる一方で、友情や男女の愛、親子の愛、尊敬など、さまざまな人のつながりを破綻なく描いていて、引き込まれます。

 語り口も名調子。全体が大きな舞台のような感じです。

 もちろん、フィクションですが、読んでいると、あの役者、このお笑いの人など、勝手に頭に思い浮かんでしまうあたりも、ついつい身を乗り出すようにして読んでしまう理由なのでしょう。

 水清ければ魚棲まずとか、清濁併せ吞むと言った陳腐な言葉を思い出してしまうのですが、順風満帆ではないからこそ、人生に味わいがある・・・と思った方が生きづらさが減るでしょう。

 結構分厚い本を読了したので、今日は早くも睡魔に襲われております。(^^ゞ

人気blogランキングへ