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  右側の本、図書館で本の入れ替えをした時に館内をうろついて見つけた本です。

  これがすごく面白いのです。

  江戸時代(近世)の旅行ブーム。お伊勢参りと富士講を筆まめな旅人が残した記録をもとにスポーツ史の専門家である著者が細かく分析しています。

  当初は単なる面白本かと思いましたが、それにしてはじみ〜に目立たないところにあって、さらに面白本あるあるの、多くの人が借りていて結構傷んでいる(わざと汚したとかではないタイプの傷み方)ということもなく、きれいな顔をして書棚にありました。

  参考文献どっさりのおかたい系のようでいて、観点がとても新鮮で楽しく読めました。
 
  取り上げられているのは東海道を東から下る人々なので、資料は東北地方、もしくは関東在住の庶民が書き残したもの。

  〇〇町や〇〇区の郷土資料として好事家や地域の研究家以外は多分、存在を意識することもないであろう古文書です。

  そこから拾い上げているのは、恐るべき江戸時代の人たちの脚力。1日に多い人は50キロ以上歩くのはざら。女性でも35キロくらいは歩いている。今みたいに舗装道路ではないし、履物だって草鞋や草履という、決して好条件ではない中でです。

  さらに面白いのは、こうした庶民が、例えば箱根駅伝に備えている大学生ランナーみたいに日常的にトレーニングしていた形跡はまったくなくて、強健だったことは間違いないにせよ、日常の延長として長距離歩行が出来ていたと言う事。

  その歩き方や休息の取り方などが独特だったというのを、当時目撃していた複数の(互いに面識を持つことが無かったり、時代が違っていたり)外国人の記録と、浮世絵などに描かれたものを参照して説明しているのが、これまた面白い。

  今の日本人は一般的に歩く時に腕と足の動きは左右反対でバランスを取っていますが、江戸の歩き方はナンバ歩きという腕と足の動きが同じだったそうです。

  運動神経の鈍い私は、朝のテレビ体操の時の足踏み運動で、気が付くとナンバ歩き調に手足を動かしていて演者の皆さんと真逆な動きをしていますが、このナンバ歩きはAIさまによると「股関節と肩関節を連動させて体幹部主導で歩くため、足腰への負担が少なく、安定感のある歩行が特徴です」。

  今風の歩き方を見慣れている今の我々にはかっこ悪くしか見えないナンバ歩きだからこその長距離歩行だったのですね。

  当時の旅は農繁期の冬がメインだったとか、旅の必需品の草鞋の入手方法や値段、草鞋の長所短所、杖は足が達者な人でも巧みに使って荷物を運んだり、ひと休みに使ったりしたなどなど、知らなかったことがいっぱいです。

  今は「歩行者は右側」と言われますが、江戸時代はお武家様がすれ違った時に腰の刀がぶつかるのを防ぐため左側通行が常識だった・・・それから今の感覚で言えば世界旅行レベルの金額をどうやって工面したかとか。

  明治になって鉄道が普及してきて、道中利用する事があっても、歩くときはものすごく歩く旅のスタイルには江戸のそれが残っていたとか。

  本当にいろいろなことが分かってとても面白かったです。

  ここまでお読みくださった方、毎度おまえの文章は長たらしいなぁ。で、結局何が言いたいかって? 

 と思われることでしょう。(^^ゞ

  この本はネットだけ利用していたら、決して出会うことはなかったと思われる本です。

  理想的には書店で購入したいところなんでごめんなさいですが、図書館の棚で自分の目で見て、手に取ってみて「ピン」と来たから借りて来たので、ネットで検索していてもおそらくは出て来なかったと思うのです。

  やっぱり本は、書店なり図書館なり本の林に分け入って見つけるのが楽しいと思うのです。

  それには紙の本!

 (繰り返しになりますが、願わくば書店でなんですが、可処分所得がずんずん減ってて物を減らしたい年金生活者なので図書館利用になるのをご容赦ください🙇‍♀️)

  書店が減ってるのに一票投じてしまっているよなと日ごろから忸怩たる思いはあるのですが、日本では全国の自治体にもれなく図書館があると言って良い状態なので、1館に1冊でも、初版の4000部くらいは売れると思います。

  もちろん、紙の本ならではの製本の美しさや重量感、ページのめくりやすさ、などなどいい点がいっぱいあります。

  これからも紙の本を読みましょうよ、と申し上げたいです。

歩く江戸の旅人たち スポーツ史から見た「お伊勢参り」 [ 谷釜 尋徳 ]
歩く江戸の旅人たち スポーツ史から見た「お伊勢参り」 [ 谷釜 尋徳 ]

 (続巻もあるみたいです。探してみよっと♪ ⇒こういう時は検索が役に立ちます)

  さて、上に書いた「ネットじゃ出会えない」と矛盾するようですが、写真の左側の本は「本が好き!」というネット上のブッククラブで献本していただいたもので、まさにネットに会員登録していたから出会えた本です。

  家人Aのタメコミアン対策に新聞購読をやめてしまってから、楽しみにしていた毎週末の書評や新刊の広告を見る事もなくなりましたので、図書館に通って知らなかった本と出会うパターンが増えましたが、本が好き!が今は新聞広告や書評の代替機能の一部を担ってくれている感じです。

大軍都東京 忘れられた日本の戦争遺跡を訪ねる [ 黒田 涼 ]
大軍都東京 忘れられた日本の戦争遺跡を訪ねる [ 黒田 涼 ]

  この本、献本はたった1冊。献本の抽選に申し込む時は意気込みというかひとこと書かなくてはなのですが、「本当は若い方にこそ読んでもらった方が良いと思うけれど、亡父が今の赤坂見附のジブラルタ生命の辺りに二・二六事件の反乱軍本部があったと語っていたのを聞いておりまして・・」というようなことを書いたら、ご採用いただけました。

 これもまたかたい本かも知れないと覚悟しておりましたが、図や写真が豊富で歴史好き向けなガイドブックっぽい感じで、思いのほか読みやすそうでホッとしました。

  当面、図書館と本が好き!の二本立てで参りますわよ。💪



(既出ですが、本が好き!は無料で登録できますので、よかったらどうぞ!)

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