予約をして図書館から借りた本、衝撃的な出残り便秘の話の本に加え、もう1冊ございます。

観光消滅 観光立国の実像と虚像 (中公新書ラクレ 821) [ 佐滝剛弘 ]
観光消滅 観光立国の実像と虚像 (中公新書ラクレ 821) [ 佐滝剛弘 ]

  こちらもタイトルからしてなかなか衝撃的です。
   この手の本は書かれている時点と今の状態が違ってしまって、ちょっとなぁと思う事もありますが、この本は昨年秋口に発行されているので、外国人観光客の増大によってもたらされているオーバーツーリズムの実態、例えば路線バスや電車に乗れない問題、ホテルの価格が日本人には手が届かなくなってしまっている問題などが取り上げられていて、違和感なく読めます。

  大学の観光学の教授という著者ですが、もともとはNHKのディレクターをされていた方。

  まだNHKの報道部門が政府御用達機関的な感じになる前の、批判的な視点があった時代の方なので、コロナ禍の観光業支援のありようのおかしさ(名前ははっきり出していませんが、すぐにあの人ねと分かる某県が地盤の大物政治家の思惑がなんてことも書いてもあります)やら、長期的視野に立たない今だけ、金だけ、自分だけ的なありように対してかなり辛口です。

  いったん安さを味わってしまったら、普通の料金が高く感じられて仕方ないだろうと思ったGO TO TRAVELやワクチン接種と引き換えの旅行支援などにすごい違和感を感じた身なので、そうだぞ〜と思う部分が多く辛さに共感いたしました。

  観光の危機には何といっても人手不足の問題も大きいとの事で、その件についてもページを割いていますが、自然災害と気候変動の項目もかなり衝撃的でした。

  昨年あたりから、今の調子で温暖化が進めば、日本で桜の花が咲かなくなるかも知れないという話が出て来ましたが、日本のみならず、世界中で異常気象や自然災害のために観光できなくなる事態が起きているとの事で、例えば、王朝の古都だったハワイのラハイナが火災で跡形もなくなった事などもあげられていました。

  もちろん、昨今の日本の災害、東日本大震災による海岸線の変貌や鉄道の運休、昨年の元日の能登地方の大地震で軍艦島の愛称のある島が崩壊してしまったことや輪島の朝市が消失してしまったことをはじめ激甚災害からの復旧が無理と判断され廃線となった鉄道の事など多数の事例が書かれています。

  浅はかな考え+人手不足+災害・異常気象という3つの要素により、観光ということ自体が消滅してしまう可能性もないわけではないと言う・・・
  
  観光、旅行というのは、バーチャルでも出来るようになりつつあり、日本の経済状態の悪化やコロナ禍で移動の自由度が失われたことで、若い世代が出不精になっていることに著者は強烈な危機感を抱いておられます。

  バーチャルで建物や風景はありありと見られても、人と人との交流はやはり現地で対面で行わないと、本当のところはわからない。

  旅行をしてよその様子が分かるから、そこに生きる人たちと実際に顔を合わせるからこそ、その地域はもう見知らぬよそではなくなる、それがひいては平和につながるという考え方、とても共感出来ます。

 一度も行った事がないところと、一度でも行った事があるところとでは、思いが違って来ますから、全ての国や地域をまわるのはとても無理だとは思うけれど、自分の居場所から離れて他の場所に行くというのは、単なる息抜き、娯楽だけではない、プラスがあると思います。

  ジジババになって旅を楽しむのも大いに結構だけれど、昔から可愛い子には旅をさせよというくらいで、本来は若い人たちこそ旅に行くべきなんですよね。




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  庭のバラ、茎が折れてしまったのを京都の百万遍の手づくり市で買ったガラスの香立てに。

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