朝ドラ「あんぱん」。

  このところ戦争描写が続き、朝から重たいものを見たくない、見るのがしんどいというご意見も散見しますが、今だからこそ戦争の実態を伝えておきたいという制作陣の意気込みを感じます。
  今朝は子ども時代は悪ガキでずるっちかったけれど、大人になって良心的な人になった崇の幼馴染の同級生、岩男君をめぐる哀しく切ないシーンから始まりまして、主題曲も流れず。

  これは朝ドラ「エール」で主人公の恩師の藤堂先生が戦場で落命される時と同じパターン。

  岩男を倒したのはなついていた中国人少年リンで、ゲリラ活動をしていた両親の敵を取ったけれど、報復を誓いながらも慕うようになっていた人を殺めてしまった哀しみをたたえていました。

  実際の戦場ならば八木上等兵のように見逃さず、その場で射殺された可能性が高いと思います。

  けれど、似たような話は聞いたことがあります。

  既出ですが、子どもの時にお世話になっていたかつての横須賀国立病院の小児科の先生は、戦時中は軍医でした。

  軍医としてインドシナへ派遣され、ゲリラ掃討の任務中にゲリラの住居と思われる現地の人の家屋の探索に入ったとき、すでに家の中はもぬけの殻だった・・・

 ということになっていますが、先生は残されていた布団のぬくもりと赤ちゃん独特の匂いから、まだ住民は近くにいて、おそらくは息を潜めているであろうことを感じたそうです。

 ここで自分がそのように言えば、徹底的に探しておそらくはゲリラとして赤ん坊も殲滅させられることになるのはわかっていらしたので「もう誰もいない」ということにして引き上げたとのこと。

  医者として、ことにいたいけな赤ん坊までの命を奪うことは良心が許さなかったのだと思います。

  その話は母を介して知りました。

  とてもあたたかい人間性の感じられる穏やかな先生でした。

  戦争で常軌を逸した行いがあったのは事実ですし、普通の人をそのように駆り立ててしまう戦争の恐ろしさを感じますが、そんな中でも良心を通した人の話は時々聞くことがあります。


  私が子どものころはまだ周囲に戦争経験者がたくさんいた時代でした。

  ことにかつて海軍の鎮守府があり、その後接収で米軍基地を市の中心部に抱えることになった横須賀生まれだったので、戦争の雰囲気を強く感じて育ったかも知れません。

  誰それさんは〇〇帰りというささやきがあったり、戦争未亡人もたくさんいらっしゃったし(渋谷の小学校時代にお世話になったみどりのおばさんと呼ばれていた小学生を交通事故から守るために登下校時に旗を持って要所要所の交差点や横断歩道で見守っていた女性たちは戦争未亡人だったと聞いています)。

  上野の山や千鳥ヶ淵ではアコーディオンで「美しき天然」を奏でる軍服を着た片足の男性と手足を失い這うようにしていた男性のペアが物乞いをしている姿をよく見かけました。

  あれは嘘だよ、本物の兵隊さんは軍人恩給が出るからねという声も聞きましたし、強制徴用で朝鮮か台湾で徴兵されて敗戦後、日本人じゃないからと切り捨てられた人たちだよという話も聞こえてきました。

  いつの間にかそういう人たちの姿は見なくなりました。

  今再開発がド過ぎてなかなか評判の悪い渋谷駅界わいも、かつては闇市の雰囲気をたたえた横丁がありましたし、何かしら「戦後」という雰囲気を感じながら育ちましたが、今の若い人たちの中には戦争があったこと、その相手がどの国だったかすら知らない方もいるとのこと。

  「あんぱん」はこれから空襲や戦後の暗い時期も描くだろうと思います。

  ですが、それでもまだまだ本当に起こったことよりはだいぶ穏やかな描写になるかと思います。

  この先は必ず明るい展開が待っているので、若い方にこそ、しんどい、重いと言わず見ていただきたいと思います。


(※なぜタイトルが「ドラマは攻めてるNHK」かと言うと・・・・報道部門はどうよ・・・でお察しください。_(._.)_)

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